「院内セミナーを行った」「業務手順書を共有した」「レクチャーの時間を設けた」「処置の流れを一通り説明した」――。指導に必要な情報はすべて伝えたはずなのに、後輩やスタッフの理解が浅かったり、実際の診療現場で動けなかったりすると、「きちんと教えたはずなのに」と焦りやもどかしさを感じることはないでしょうか。

結論から言えば、指導者が「伝えたこと」と、受け手が「学んだこと」はイコールではないからです。

知識は、渡した瞬間にそのまま相手の力になるわけではありません。相手がすでに持っている知識や経験と結びつき、実際の場面での判断の中で活用され、何度も反復されることで、ようやく「実践的な能力」へと変化します。指導する側にとって論理的で分かりやすい説明が、学ぶ側にとってもスムーズに吸収できるとは限りません。

教育の現場全般においても、教科書上の理論や知識を記憶していることと、目の前の状況やデータ、人の変化からその意味を推察できることの間には大きな隔たりがあります。また、手順やルールを暗唱できることと、状況に合わせて柔軟かつ適切に実践できることも別物です。知識は不可欠ですが、知識だけでは質の高い実践には至りません。

では、指導者は何に注力すべきなのでしょうか。