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2025-04-18

軽いカレイはよく泳ぐ~異体類の体比重と生態の関連を指摘~

寄稿者:北海道大学

《ニュース概要》
■ポイント
・魚類の体比重は水中での泳ぎやすさや海底での安定性を通じて行動生態に影響。
・知られる異体類(カレイの仲間)16 種の体比重を計測し、摂餌習性との関連を比較。
・体比重は遊泳生物食、混合食、底生生物食の順に高く、摂餌習性を反映することを解明。

■概要
北海道大学大学院水産科学研究院の山村織生准教授、同大学院水産科学院博士後期課程 3 年(研究当時)の西尾燦吾氏らの研究グループは、北海道周辺に分布する異体類 16 魚種の体比重を計測して比較しました。
16 魚種をその摂餌習性から、主に魚類やイカ類などを捕食する遊泳生物食者(2 魚種)、ゴカイ類、二枚貝や小型甲殻類を捕食する底生生物食者(9 魚種)と、両者の中間的な位置づけにある混合食者(5 魚種)に分類し体比重を比較したところ、遊泳生物食者の体比重が圧倒的に低く、混合食者がそれに次ぎ、底生生物食者が最も高い体比重を示しました。
中でも遊泳生物食者のカラスガレイは最も低い体比重(平均値 1.022 g cm-3)を示し、この値は海水の比重(1.026 g cm-3)を下回ったことから、遊泳に要するコストが低く、遊泳生物の捕食に有利であると考えられました。一方、底生生物食者の高い体比重は海底に沈んで定位したり、砂泥中に潜って身を隠すのに有利と考えられました。

本研究で明らかにした体比重の違いは体組織中の脂質の含有量や組成と大きく関わっており、異体類の生態や進化を考える上での重要な特徴であることが指摘されます。
なお、本研究成果は、2025 年 3 月 27 日(木)公開の英国水産学会誌 Journal of Fish Biology 誌にオンライン掲載されました。

メイン画像:カレイ類体比重の測定風景。空中重量と水中重量を量り、アルキメデスの原理に基づき比重を計算。

【背景】
異体類(カレイの仲間)は、中高緯度海域では漁業資源のみならず生態系の構成要素としても重要ですが、多様な種を含み、中には生態がよく分かっていない種も含まれます。この仲間は鰾(うきぶくろ)を持たないため、水中での浮上、沈降や遊泳行動に体組織の比重が大きく影響することが考えられますが、その計測や生態との関連での検討は行われてきませんでした。

【研究手法】
北海道周辺に分布する異体類 16 魚種を収集し(表 1)、摂餌や性成熟の影響を除くため内臓を取り除いた上で空中重量と水中重量を計測し、アルキメデスの原理*1 に基づいて体の比重を計算しました(P 1 図)。そして、魚種をその摂餌習性によって遊泳生物食者、底生生物食者と両者の中間に位置する混合食者に分類し、魚種やグループ間での比重の違いを比較しました。

【研究成果】
グループ別では遊泳生物食者が圧倒的に低比重で、次いで混合食者、底生生物食者の順に比重が高くなりました。種別にみると、遊泳生物食者のカラスガレイが最も低い体比重(平均値 1.022 g cm-3)を示し、この値は海水の比重(1.026 g cm-3)を下回ったことから、遊泳に要するコストが低く、遊泳生物の捕食に有利である一方、底生生物食者の高い体比重は、海底に沈んで定位したり、砂泥中に潜って身を隠すのに有利と考えられました。

【今後への期待】
体比重の違いは体組織中の脂質の含有量や組成と大きく関わっており、異体類の生態や進化を考える上での重要な特徴と言えます。本研究により、摂餌や遊泳に関する形態と、異体類の生態や進化との関連性についての研究の深化が期待されます。

■論文情報
・論文名
Relationship between body density and feeding habit among flatfishes(異体類の体比重と摂餌習性の関連)
・著者名
西尾燦吾(研究当時)1、伊藤和希 1、山村織生 2(1 北海道大学大学院水産科学院、2 北海道大学大学院水産科学研究院)
・雑誌名
Journal of Fish Biology(魚類学の専門誌)
・DOI
10.1111/jfb.70036
・公表日
2025 年 3 月 27 日(木)(オンライン公開)

【用語解説】
*1 アルキメデスの原理 …
「水中の物体は、その物体が押しのけている水の質量が及ぼす重力と同じ大きさで上向きの浮力を受ける」という原理。

■詳細はこちら※参照元のサイトを開きます
https://www.hokudai.ac.jp/news/2025/04/post-1858.html

【参考図】
比重計測したカレイ種名と摂餌習性