寄稿者:大阪公立大学 / 国立健康危機管理研究機構
《ニュース概要》
本研究所ウイルス免疫分野の川岸崇裕助教、小林剛教授らの研究チームは、本研究所感染症メタゲノム研究分野、本学大学院薬学研究科、本学感染症総合教育研究拠点(CiDER)、大阪公立大学大学院創薬科学研究科および国立健康危機管理研究機構との共同研究により、コウモリ由来レオウイルス(NBV)の感染性・病原性獲得の仕組みの一端を明らかにしました。研究チームはウイルスの人工合成系を用いて、コウモリから分離されたNBVとヒトから分離されたNBVの性状を比較し、ウイルスのスパイクタンパク質σC(シグマC)がヒト分離株の効率的な感染性・病原性に関与することを明らかにしました。さらにσCタンパク質内の特定のアミノ酸がσCの安定性に寄与するとともにヒト分離株で高度に保存されていることを見出しました。そのため、これらのアミノ酸が、NBVヒト分離株がヒトに感染する過程に関与する可能性が示唆されました。本研究成果はコウモリ由来ウイルス感染症のヒトへの病原性獲得機序の理解に繋がると期待されます。
【研究成果のポイント】
コウモリ由来レオウイルスNBVのコウモリ分離株とヒト分離株の比較解析からスパイクタンパク質σCが効率的な感染およびマウスモデルでの病原性に重要であることを明らかにしました。
様々なσC変異体ウイルスを用いた解析から、σC受容体との結合部位ではなく、ボディードメイン内の特定のアミノ酸が効率的な感染性・病原性に関与することを示しました。
生化学的および遺伝学的な解析から、同定したσCボディードメイン内のアミノ酸はσCの安定性に関与すること、またすべてのヒト分離株で高度に保存されていることを明らかにし、ボディードメイン内の6つのアミノ酸がNBVのヒトへの感染性獲得に関わることを示唆しました。
■背景と成果
コウモリ由来レオウイルス(NBV)は1970年に初めてコウモリから分離されたウイルスです。2007年に初めて急性呼吸器疾患患者から分離され、ヒト疾患との関連が報告されました。私たちの研究室ではこれまでにヒトから分離されたNBVの人工合成系を世界に先駆けて確立し、NBVヒト分離株のFAST、p17、σCタンパク質の機能および病原性との関連を明らかにしてきました。近年、新しい株がコウモリや呼吸器疾患患者から分離されています。しかし、コウモリ分離株とヒト分離株のウイルス学的な性状の違い、ヒトへの感染性獲得に関わるウイルスタンパク質については不明でした。本研究ではコウモリ分離株とヒト分離株の遺伝子を組み合わせたキメラウイルスを作製し比較解析しました。その結果、ウイルス粒子表面に存在するスパイクタンパク質σCがコウモリ分離株とヒト分離株間での感染性および病原性の違いを規定することを明らかにしました。また、これまでに解析されていない、σCタンパク質ボディードメイン内の6つのアミノ酸の違いがヒト分離株の効率的な感染・病原性に重要であることを明らかにしました。コウモリは、ヒトに高い病原性を示す様々なウイルスの自然宿主であることが知られています。本成果は、コウモリ由来ウイルスのヒトへの病原性獲得機構を理解する一例になると期待されます。
本研究成果は、国際学術誌「PLoS Pathogens」(オンライン)に2026年8月3日付で掲載されました。
タイトル:
Nelson Bay Orthoreovirus cell attachment protein σC determines strain-specific differences in infectivity and pathogenesis
著者名:
Takahiro Kawagishi, Yusuke Sakai, Hiroya Oki, Ryotaro Nouda, Yuta Kanai, Kazuki Kawahara, Shota Nakamura, Masayuki Shimojima, Masayuki Saijo, Yoshiharu Matsuura, Takeshi Kobayashi
DOI:
https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1014409










