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2026-08-27

マダニが媒介するSFTSから回復後、91%が罹患後症状を経験 -SFTS発症後1年間の症状経過を、西日本9施設の共同研究で明らかに―

寄稿者:大阪大学

《ニュース概要》
【研究成果のポイント】
・西日本 9 医療機関の重症熱性血小板減少症候群(SFTS) ※1 生存者 33 人を対象に、発症時から 12か月後まで身体症状の経過を調べ、33 人中 30 人(91%)が少なくとも 1 つの罹患後症状を経験していることが明らかに。
・主にマダニが媒介するウイルス感染症である SFTS は、これまで発症直後の診断・治療や死亡リスクに焦点を当ててきており、回復した後、どのような身体症状が、どの程度の頻度続くのかはよく分かっていなかった。
・倦怠感や四肢・関節痛などの残存症状 ※2 は発症初期から出現して徐々に減少する一方、体重減少、脱毛、眼の症状などの遅発性症状 ※3 も多く報告された。
SFTS 診療において、回復後も継続して経過をみる重要性を示し、症状に応じた評価や支援につながることに期待。

■概要
大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)・大学院医学系研究科の佐田 竜一寄附講座准教授らの研究グループは、西日本の 9 医療機関で重症熱性血小板減少症候群(SFTS)から回復した成人 33 人を対象に、発症時から 1、3、6、12 か月後までの身体症状の経過を調べ、発症後 1〜12 か月の間に、33 人中 30 人(91%)が少なくとも 1 つの罹患後症状を経験していることが明らかになりました。

SFTS は、これまで発症直後の診断・治療や死亡リスクに焦点を当ててきており、回復した後、どのような身体症状がどの程度の頻度続くのかはよく分かっていませんでした。

今回、対面面接で評価を行い、SSS-8※4 の 8 項目と SFTS に関連する 17 項目の計 25 項目の症状を 5 段階で振り返りました。今回の調査で発症後 1〜12 か月の間に、91%の方が疲れ・エネルギー低下や体重減少などの症状を報告しました。また、倦怠感、四肢・関節痛、背部痛は発症時に多く、その後減少しました。一方、体重減少、脱毛、視覚障害・眼の問題は、発症時よりも発症後 1〜12 か月後に多く報告されました。
本研究は、SFTS 診療を退院までで終わらせず、発症後 1 年間の身体症状にも注意を向ける必要性を示し、症状に応じた評価や支援につなげることが期待されます。本研究は少人数の回顧的調査であるため、今後はより多くの患者を前向きに追跡し、生活機能や生活の質も含めて検証する必要があります。
本研究成果は、国際医学誌「BMC Infectious Diseases」(オンライン)に、2026 年 7 月 31 日に公開されました。

【佐田 竜一寄附講座准教授のコメント】
SFTS は発症初期の重症化や死亡に注目されがちですが、回復後も倦怠感や痛みが続き、脱毛や眼の症状などが後から目立つ場合があります。退院後も患者さんの訴えを丁寧に確認し、必要な支援につなげる契機になればと考えています。

■研究の背景
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、主にマダニが媒介するウイルス感染症で、発熱、血小板・白血球減少、消化器症状を起こし、重症例では多臓器不全に至ります。発症初期の死亡率は 10〜30%と高く、これまで研究の多くは発症直後の診断・治療や死亡リスクに焦点を当ててきており、
1.SFTS から回復した後、どのような身体症状が、どの程度の頻度で続くのか?
2.発症初期には目立たず、回復の過程で多く報告される症状があるのか?
については、症例報告以外の体系的な情報がほとんどありませんでした。

■研究の内容
本研究には西日本の 10 医療機関が参加し、9 医療機関から成人 SFTS 生存者 33 人が登録されました。2024 年 12 月〜2025 年 3 月に対面面接を行い、発症時と発症 1、3、6、12 か月後について、SSS-8 の 8 項目と SFTS に関連する 17 項目の計 25 症状を 0〜4 点で振り返って評価しました。参加者の発症時年齢中央値は 68 歳で、女性は 16 人(48%)、ICU 入室は 4 人(12%)でした。

33 人中 30 人(91%)が 1〜12 か月のいずれかに少なくとも 1 つの症状を報告しました。急性期から残りやすい症状として、疲れ・エネルギー低下(70%)、四肢・関節痛(45%)、背部痛(42%)、睡眠障害(39%)などがみられました。一方、体重減少(67%)、脱毛(52%)、視覚障害・眼の問題(27%)は急性期後に多く報告されました。SSS-8 は全体として改善しましたが、12 か月後も 8%に中等度以上の負担が残りました。

■本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
本研究は、SFTS 診療を退院までで終わらせず、発症後 1 年間の身体症状にも注意を向ける必要性を示しました。倦怠感、痛み、睡眠障害などが続く場合や、体重減少、脱毛、眼の症状が回復期に目立つ場合には、症状に応じた評価や支援につなげることが期待されます。ただし、因果関係や個々の症状の発症時期を確定するには、前向き研究が必要です。

■特記事項
本研究成果は、2026 年 7 月 31 日に BMC Infectious Diseases(オンライン)に掲載されました。

タイトル:“Trajectories of residual and late-onset somatic symptoms of severe fever with thrombocytopenia syndrome: Insights from a multicenter questionnaire study in western Japan”
著者名:Ryuichi Minoda Sada, Shungo Yamamoto, Takao Toyokawa, Toru Takahashi, Atsushi Yamanaka, Masafumi Kawamura, Kyoko Yokota, Yusuke Fukumori,Tomohiro Taniguchi, Ryutaro Tanizaki, Kentaro Iwata, Shigetoshi Sakabe, ShuKiyotoki, and Satoshi Kutsuna
DOI:https://doi.org/10.1186/s12879-026-14126-4

なお、本研究は、「日本財団・大阪大学感染症対策プロジェクト」の一環として行われ、西日本の参加医療機関の協力を得て実施されました。

■用語説明
※1 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
主にマダニが媒介する SFTS ウイルスによる感染症。発熱、消化器症状、血小板・白血球減少などを起こし、重症化すると多臓器不全に至ることがあります。

※2 残存症状
本研究における分類。本研究では、集団全体で発症時の報告割合が最も高く、その後の時点で減少した症状を示します。個々の患者で同じ症状が連続していたことを直接確認した定義ではありません。

※3 遅発性症状
本研究における分類。集団全体で、発症時よりも 1、3、6、12 か月後のいずれかに報告割合が高かった症状。個々の患者でその時点に新しく発症したことを意味するものではありません。

※4 SSS-8(Somatic Symptom Scale-8)
疲れ、痛み、めまい、睡眠障害など 8 つの身体症状の負担を 0〜32 点で評価する尺度。点数が高いほど症状の負担が大きいことを示します。