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2026-08-05

多様な形態を示す日本鶏 4 品種において肋骨の新規変異を発見

寄稿者:帯広畜産大学


【概要】

帯広畜産大学と北海道大学の研究チームは、国の天然記念物に指定されている日本鶏(にほんけい※1)4 品種(トサジドリ、コシャモ、ミノヒキチャボ、チャボ)の中雛(ちゅうすう)および成鶏を対象に、骨格標本および CT 画像の評価を実施し、それぞれの品種の骨格形態を詳細に解析しました。これら日本鶏 4 品種の成鶏時には、大きな形態的差異が認められるものの、具体的にどの骨がどの時期にどのように異なっているのかは、ほとんど明らかにされていません。解剖学の教科書には、ニワトリの肋骨は 7 本と記載されていますが、本論文の解析によって、日本鶏 4 品種のそれぞれにおいて野生型の肋骨 7本の個体に加えて、新規変異型の肋骨 8 本の個体が存在することが明らかになりました。
さらには、変異型の出現頻度において有意な品種差が認められ、トサジドリおよびコシャモでは野生型(肋骨 7 本)が 70%以上と大部分を占めるのに対して、ミノヒキチャボおよびチャボでは変異型(肋骨 8 本)が半々あるいは 60%以上を占めることが分かりました。
野生型および変異型において、頚椎および胸椎の総数に差がないことから、この肋骨における新規変異は、ホメオティック変異(※2)であると考えられます。今後の遺伝解析によって、この新規変異はどの胚発生段階で現れるのか、どのような遺伝様式で親から子へ遺伝するのか、さらには、どのような遺伝子群によって制御されているのかが明らかにされる可能性があります。本研究の成果は、家畜動物の品種化・愛玩化に伴う長期間の人為選抜が多様な形態変異を生み出す仕組みについて示唆を与えるものです。


【解説】

現存する日本鶏 45 品種の多くは観賞目的で作られてきました。姿形の優美さ、珍しさなどから、日本鶏 45 品種のうち約 25 品種が国の天然記念物に指定されています。とりわけ、特別天然記念物に指定されているオナガドリは、雄の尾羽が換羽せず伸び続ける特徴を示すため、尾羽が 10 m を超えた例も記録されています。このように、日本鶏には形態に特徴をもつ品種が多く存在します。
帯広畜産大学の研究チームでは、体格は約 1 kg と同程度であるが、形態に大きな違いが認められる日本鶏 4 品種のトサジドリ、コシャモ、ミノヒキチャボ、チャボに注目して遺伝学の研究を進めています。ニワトリの体型は、セキショクヤケイ型、マレー型、コーチン型およびその他に大きく分けられます。トサジドリおよびミノヒキチャボはセキショクヤケイ型の体型、コシャモはマレー型の体型、チャボはその他に分類される独特な体型を示します。成鶏の写真からは、それぞれの品種の多様な見た目の違いが確認できますが、具体的に、骨格のどこがどのように異なるのかはほとんど明らかになっておりません。
研究チームの岡田さんは、首の長さに有意な品種による差異があるのではないかという仮説を立てて、骨格標本とCT画像を比較しました。脊椎は、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎に分けられます。解剖学的には、肋骨の有無によって、頚椎(肋骨なし)と胸椎(肋骨あり)を見分けることができます。岡田さんの詳細な観察によって、日本鶏 4 品種のすべてにおいて肋骨数が増加する新規変異が存在し、変異型の出現頻度において有意な品種差があることが明らかにされました。7 週齢と成鶏時に同様の出現頻度が観察されたことから、少なくとも 7 週齢時にはこの新規変異が形成されており、性成熟後にも維持されていることが分かりました。さらには、追加される肋骨は頭側にあることから、頚椎の胸椎化が起こっていることが確認されました。
キリン、ヒト、ネズミなど多様な体格を示す哺乳類のほぼすべてが 7 個の頚椎をもつという共通性は良く知られています。ヒトにおいて、頚椎の胸椎化による頚肋(けいろく)が報告されており、しばしば運動障害などに繋がります。また、マンモスやケブカサイが絶滅する直前に頚椎数の異常が見られたことなどから、頚肋の発生は近親交配が進んだ哺乳類個体群における絶滅リスクの有力な予測因子となり得るとの報告があります。もし日本鶏における頚肋の事例が、ヒトの頚肋や絶滅の危機にある他の哺乳類に認められるものと同様の遺伝的変異によって引き起こされていることが明らかになれば、それらのメカニズムの理解が深まる可能性があります。今後、多様な日本鶏品種をモデルにした遺伝解析を進めることで、様々な研究に発展することが期待されます。

本研究は、JSPS 科学研究費補助金(科研費)21K05886 および 24K00151 の助成を受けて実施されました。

《本研究で注目した日本鶏 4 品種(トサジドリ、コシャモ、ミノヒキチャボ、チャボ)の成鶏》
トサジドリは野生原種に近い標準的な体型を示し、コシャモは直立姿勢で筋骨隆々の体型を示す。ミノヒキチャボは標準的な体型で脚が短く、尾羽や蓑毛が豊かな特徴を示す。
チャボは脚が短く、直立した尾羽をもち、全体的に丸みを帯びた体型を示す。

《成鶏における CT 画像および骨格標本》
上の画像は野生型(肋骨 7 本)を、下の画像は変異型(肋骨 8 本)を示している。変異型の頭側に追加の肋骨が形成されていること(頚椎の胸椎化)が確認できる。


【用語解説】

(※1)日本鶏:
日本で作出された品種を総称して「日本鶏(にほんけい)」と呼び、約45 の品種が存在する。これらの品種のほとんどは、卵肉生産を目的としたものではなく、観賞用の品種であることが特徴的。姿形の可愛らしさや優美さを愛でることや、鳴き声を愉しむことに特化して作出された品種も存在する。

(※2)ホメオティック変異:
ホメオティック遺伝子の異常により、本来の位置に形成される器官が別の器官に置き換わる現象のこと。


【発表雑誌】
Poultry Science
【論文名】
A novel homeotic mutation in morphology using skeletal specimens in four breeds of Japanese indigenous chickens
【著者】
帯広畜産大学 大学院畜産学研究科
岡田 優明(おかだ ゆめ)
西田 悠真(にしだ ゆうま)
Dipson Gyawali (でぃぷそん ぎゃわり)
Prudence Nyirimana (ぷるでんす にりまーな)
帯広畜産大学 生命・食料科学研究部門
准教授 後藤 達彦(ごとう たつひこ)
帯広畜産大学 獣医学研究部門
准教授 近藤 大輔(こんどう だいすけ)
准教授 岩﨑 遼太(いわさき りょうた)
(研究実施当時:助教)助教 冨安 洵平(とみやす じゅんぺい)
北海道大学 総合博物館
教授 江田 真毅(えだ まさき)


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https://www.obihiro.ac.jp/news/78969