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2026-07-16

犬の肺がんの遺伝子を調べ、新しい治療法の開発へ

寄稿者:日本獣医生命科学大学

《ニュース概要》
論文名
Molecular Characterization of Hotspot Mutations in HER2, BRAF, KRAS, and PIK3CA in Canine Pulmonary Adenocarcinoma from Japan
(和訳)
日本におけるイヌ肺腺癌のHER2、BRAF、KRASおよびPIK3CA hotspot変異の分子生物学的解析

著者
松村 明日美(1)、長島 智和(1)、落合 和彦(2) 、大沼 天萌(1)、川村 ほのか(1) 、町田 雪乃(1)、呰上 大吾(3) 、盆子原 誠(4) 、石渡 俊行(5) 道下 正貴(1)※
1.日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 病態獣医学部門・獣医病理学研究室
2.日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 応用獣医学部門・獣医衛生学研究室
3.東京農工大学・獣医臨床腫瘍学研究室
4.日本獣医生命科学大学 獣医学部 獣医学科 臨床獣医学部門 ・獣医臨床病理学研究室
5東京都健康長寿医療センター研究所・老年病理学
※責任著者

掲載雑誌
Veterinary Sciences (2026年、13号 596)
MDPI Journal

■研究内容
日本では犬や猫などの伴侶動物が家族の一員として暮らしており、高齢化に伴ってがんに罹患する動物も増えています。しかし、犬の肺がんは発生頻度が低く、情報の蓄積が少ないことから進行した場合の治療法は限られているのが現状です。
本研究では、手術で摘出された犬の肺腺癌20例を解析した結果、一部の症例で「HER2」や「BRAF」と呼ばれる遺伝子に異常が見つかりました。さらに、BRAF遺伝子に異常を持つ肺がん細胞に対しては、特定の分子を狙って作用する「分子標的薬」が高い効果を示すことが明らかになりました。

本研究成果は、がんの種類だけでなく遺伝子の特徴に合わせて治療法を選択する「個別化医療」の実現につながる重要な成果です。ヒト医療では、すでに広く行われている個別化医療ですが、その考え方を犬のがん治療にも応用できる可能性が示唆され、今後の診断や治療法の発展が期待されます。
今後、本研究成果を基盤として、犬の肺がんに対する遺伝子診断や分子標的治療の実用化が進むことで、診断精度の向上や新たな治療選択肢の提供につながることが期待されます。こうした伴侶動物医療の発展は、動物の健康と福祉の向上だけでなく、動物と共に暮らす人々の安心や幸福にも寄与することから、One Health・One Welfareの理念の実現にも貢献するものです。(文責: 道下正貴)