寄稿者:酪農学園大学
《ニュース概要》
研究成果のポイント
・マイコプラズマ・ボビス(Mycoplasma bovis)は、牛の乳房炎や呼吸器疾患等を引き起こし、酪農・畜産業界に莫大な経済的被害をもたらす重要な病原体
・従来の細菌培養による試験法では、結果を得るために約 2 週間が必要だったが、PCR と携帯型シークエンサーを組み合わせることで、検査開始からわずか 6 時間で主要な抗菌薬への感受性を予測することに成功
・臨床現場での迅速な治療薬選択や、広域な薬剤耐性サーベイランスへの応用が期待
■研究成果の概要
酪農学園大学の臼井優教授らの研究グループは、携帯型シークエンサー(nanopore sequencer)と複数の標的遺伝子を同時に増幅する「マルチプレックス PCR 法」を活用し、牛の重要な病原体であるマイコプラズマ・ボビス(Mycoplasma bovis)の薬剤耐性変異を、その日のうちに判定・監視する新たな検査手法を開発しました。
M. bovis は、乳牛の乳房炎や子牛の肺炎などの原因となり、治療が極めて困難であり、酪農現場での脅威となっています。この細菌は増殖が遅く、従来の検査法では検査に時間がかかるため、適切な抗菌薬が判明するまでに約 2 週間かかってしまい、その間の経験的な抗菌薬の使用がさらなる薬剤耐性菌を生み出す悪循環を招いていました 。 そこで今回、PCR 法と携帯型シークエンサーを組み合わせた検査プラットフォームを構築し、M. bovis に対して 5 系統の抗菌薬への感受性に関わる複数の遺伝子の変異を一度に解析し、わずか 6 時間で感受性の有無を高い精度で予測できるようにしました。
さらに、本手法を用いて日本国内から集められた 329 株のM. bovis を調査したところ、過去(2013-2016年)と近年(2023-2025 年)の間で、耐性変異を持つ株の割合が急増しているという事実が明らかになりました。
この技術が普及することで、獣医師が有効な抗菌薬を選択できるようになり、治療成功率の向上だけでなく、抗菌薬の適正使用や耐性菌の拡散防止に貢献することが期待されます。
■論文発表の概要
Usui M*, Ebisawa M, Okamura S, Noda A, Fukuda A, Nakajima C, Suzuki Y.
Microbiology Spectrum. 2026.
DOI: 10.1128/spectrum.01242-26Press Release
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