寄稿:東京医科大学
【概要】
理化学研究所(理研)生命医科学研究センター免疫転写制御研究チームの谷内一郎チームディレクター、東京医科大学分子病理学分野の黒田雅彦主任教授らの国際共同研究グループは、外来性抗原に対する免疫寛容[1]が樹立されるのに必須の末梢誘導性制御性 T 細胞[2]を産み出す抗原提示細胞[3]の分化制御機構を明らかにし、この細胞を人為的に操作することで末梢誘導性制御性 T 細胞を増やせることを明らかにしました。
本研究成果は、外来性抗原への過剰な免疫応答が原因で発症する炎症性疾患や食物アレルギーに対する治療法、移植医療分野での拒絶反応抑制法の開発につながる成果といえます。
今回、国際共同研究グループは転写因子である Runx1 タンパク質[4]の発現操作により、Thetis 細胞[5]と名付けられた特異な抗原提示細胞の分化が増強され、その結果、末梢誘導性制御性 T 細胞を増やすことが可能であることを発見しました。
本研究は、科学雑誌『Nature Immunology』オンライン版(6 月 19 日付:日本時間 6 月 19 日)に掲載されます。
【背景】
制御性 T 細胞は免疫反応を抑制する能力を有する特別な CD4 陽性 T 細胞です。その発見の功績に対し坂口志文博士に 2025 年のノーベル生理学・医学賞が贈られたことは記憶に新しく、制御性 T 細胞を活用した新たな治療法の開発に期待が寄せられています。
制御性 T 細胞には、胸腺という T 細胞がつくられる臓器で発生するものと、末梢組織でナイーブ CD4 細胞[6]から分化するものの 2 種類があることが知られています。
胸腺由来の制御性 T 細胞は、自己抗原を認識する T 細胞抗原受容体を発現する細胞の一部が、Foxp3 という制御性 T 細胞のマスター転写因子[7]を発現することで発生します。そのため、胸腺由来の制御性 T 細胞ができないと、自己抗原に対する免疫応答が抑制されず激しい自己免疫病が発症します。
一方で、ヒトの身体の中では、腸管を代表として常在性細菌叢(さいきんそう)が共生し、腸管には食物由来の成分も多数存在します。このような常在性細菌や食物由来の抗原は自己抗原ではなく外来性の抗原です。ヒトの身体にはこのような外来性抗原に対して過剰な免疫応答が起こらない仕組みが備わっていて、これは外来性抗原に対する免疫寛容と呼ばれます。
最近の研究から、この免疫寛容には、末梢組織でナイーブ CD4 細胞から分化する末梢誘導性制御性 T 細胞が必須であることが分かってきました。この末梢誘導性制御性 T 細胞は、Foxp3 転写因子に加え Rorγt 転写因子も発現することから Rorγt 陽性制御性 T 細胞とも呼ばれます。末梢誘導性制御性 T 細胞の産生には、外来性抗原の情報をナイーブ CD4 細胞に提示して末梢誘導性制御性 T 細胞への分化を誘導する役割を持つ、いわば末梢誘導性制御性 T 細胞の親のような細胞が存在するはずです。末梢誘導性制御性 T 細胞の「母なる細胞」が見つかり、その数や機能を操作することができれば、末梢誘導性制御性 T 細胞を増やすことが可能になると考えられることから、その発見は極めて激しい競争状態となっていました。その発見のためには、この母なる細胞の欠損により末梢誘導性制御性 T 細胞が産生されないマウスが有用な研究材料となります。
【研究手法と成果】
理研免疫転写制御研究チームでは、遺伝子変異マウスを用いて免疫細胞分化における Runx/Cbfβ 転写因子複合体(Runx タンパク質と Cbfβ タンパク質がヘテロ(異種)2 量体を形成したもの)の機能を長年研究してきました。Cbfβ 遺伝子からは RNA スプライシング[8]により Cbfβ1 と Cbfβ2 という C 末端[9]のアミノ酸構造が異なる Cbfβ タンパク質が産生されます。
Cbfβ1 と Cbfβ2 がそれぞれ特異な機能を有するか調べるために、国際共同研究グループは Cbfβ 遺伝子に変異を導入して Cbfβ2 を特異的に欠損するマウス(Cbfβ2 欠損マウス)を作製しました。その結果、Cbfβ2 欠損マウスは 3 カ月齢という若い年齢で大腸炎を自然発症することが分かりました(図 1A)。
一方、末梢誘導性制御性 T 細胞は大腸炎の発症抑制に重要な働きをすることが別の研究注 1)から判明していたので、国際共同研究グループは Cbfβ2 欠損マウスに末梢誘導性制御性 T 細胞が存在するかを調べました。その結果、腸管の固有粘膜層に胸腺由来の Rorγt 陰性制御性 T 細胞(Foxp3+Rorγt− pTreg)は存在しているが、末梢誘導性の Rorγt 陽性制御性 T 細胞(Foxp3+Rorγt+ pTreg)はほとんど存在しないことが分かりました(図 1B)。
Runx/Cbfβ 転写因子複合体は T 細胞でも発現し Foxp3 遺伝子の発現調節に関与します。そこで国際共同研究グループは、Cbfβ2 欠損マウスでの末梢誘導性制御性 T 細胞(Rorγt+ pTreg)の欠失が T 細胞の内因的な原因によるのか、T 細胞以外に原因があるのか調べることにしました。
その方法として、遺伝学的手法を用い T 細胞やそれ以外の免疫細胞で Cbfβ2タンパク質の発現を回復することで、末梢誘導性制御性 T 細胞が分化するかどうかを調べる実験を行いました。実際には、Cre タンパク質[10]の発現によりSTOP 配列[11]を除去して、トランスジェニック Cbfβ2 タンパク質の発現が誘導される実験系を構築し、Cre タンパク質をどの細胞で発現させるか調整することで、特定の細胞にトランスジェニック Cbfβ2 タンパク質を発現させることができます。その結果、T 細胞でのトランスジェニック Cbfβ2 タンパク質の発現では、末梢誘導性制御性 T 細胞の分化は回復しませんでした(図 1C)。この結果は、末梢誘導性制御性 T 細胞の消失の原因が T 細胞での Cbfβ2 欠損ではないことを示します。
さらに国際共同研究グループは、卵のアルブミンタンパク質に反応するナイーブ CD4 T 細胞を野生型マウスと Cbfβ2 欠損マウスに移入し、卵のアルブミンを経口投与することで末梢誘導性制御性 T 細胞に分化するか調べました。その結果、野生型マウスでは移入したナイーブ CD4 T 細胞から末梢誘導性制御性 T細胞が発生したのに対し、Cbfβ2 欠損マウスでは末梢誘導性制御性 T 細胞は発生しませんでした(図 1D)。この結果は、Cbfβ2 欠損マウスでは、ナイーブ CD4T細胞に外来性抗原の情報を伝えて末梢誘導性制御性 T 細胞の分化を誘導する抗原提示細胞に問題があることを示します。Cd11c-Cre マウスは、抗原提示細胞を含む細胞集団で Cre タンパク質を発現しますが、この Cd11c-Cre を用いてトランスジェニック Cbfβ2 タンパク質を Cbfβ2 欠損マウスに発現させると末梢誘導性制御性 T 細胞分化が回復しました。
こうしたことから、国際共同研究グループは次に、Cbfβ2 欠損マウスでは、末梢誘導性制御性 T 細胞の分化を誘導する抗原提示細胞にどのような問題があるか調べることにしました。
Thetis 細胞は末梢誘導性制御性 T 細胞の分化を誘導する抗原提示細胞として2022 年に発見された細胞で、少なくとも 4 種類のサブセット(TC-I、TC-II、TCIII、TC-IV)があり、最近の研究注 2)からは TC-IV が末梢誘導性制御性 T 細胞の分化誘導に重要であることが分かってきています。そこで国際共同研究グループは、フローサイトメトリーという細胞解析法で Thetis 細胞を同定する方法をブラウン・クリソセミス博士から学び、Cbfβ2 欠損マウスを調べました。その結果、Cbfβ2 欠損マウスでは TC-II、TC-III、TC-IV が欠失していることが分かりました(図 2 中)。Cbfβ2 欠損マウスでは Cd11c-Cre を用いたトランスジェニックCbfβ2 タンパク質発現により末梢誘導性制御性 T 細胞の分化が回復します。しかし、このマウスで Thetis 細胞分化はどのようになっているか解析したところ、TC-IV サブセットの分化のみが回復していました(図 2 下)。この結果は TC-IVサブセットの回復のみで末梢誘導性制御性 T 細胞の分化誘導には十分であることを示す、初めての遺伝学的証拠です。
Cbfβ は Runx タンパク質と 2 量体を形成し機能します。哺乳動物では 3 種類の Runx 遺伝子からそれぞれ Runx1、Runx2、Runx3 の 3 種類の Runx タンパク質が産生されます。そこで国際共同研究グループはどの Runx タンパク質がThetis 細胞の発生に関与するか調べることにしました。
Runx3 遺伝子の変異によりマウスが大腸炎を発症することが報告されていたこともあり、国際共同研究グループはまず、Runx3 に着目し、新しい Runx3 変異マウスである Runx3-WRPW マウス注 3)を調べました。Runx3-WRPW マウスでは、Runx3 タンパク質の C 末端にある WRPY モチーフ(構造)内のチロシン(Y)残基がトリプトファン(W)残基に置換されていることで、本来の Runx3の機能が阻害されます。Cbfβ2 欠損マウスと同様に、Runx3-WRPW マウスは大腸炎を自然発症し、末梢誘導性制御性 T 細胞が欠失し、さらに TC-II、TC-III、TC-IV も欠失が観察されました。
続いて国際共同研究グループは Cd11c-Cre トランスジェニックマウスを用いた条件付き Runx3 遺伝子破壊の影響を調べました。その結果、この実験系ではRunx3 遺伝子の単独破壊で末梢誘導性制御性 T 細胞の欠失は見られず、Runx3遺伝子に加え Runx1 遺伝子を同時に破壊することで、末梢誘導性制御性 T 細胞と TC-III、TC-IV の欠失が同時に起こることを発見しました(図 3 左の中)。
国際共同研究グループは、Cre タンパク質の発現により Runx1 タンパク質の発現を誘導できるマウスを保有していたので、Cd11c-Cre トランスジェニックマウスにより内在性の Runx1 遺伝子と Runx3 遺伝子を破壊すると同時に、トランスジェニック(Tg)Runx1 タンパク質の発現を誘導するマウス(Runx1-Tg)を作製しました。予想通りトランスジェニック Runx1 タンパク質の発現によりTC-III、TC-IV の欠失は回復しました(図 3 左の右)。詳細に観察すると、Runx1-Tg で TC-III、TC-IV の細胞数は増加し、特に TC-IV の増加が顕著でした(図 3右の下)。さらに末梢誘導性制御性 T 細胞の分化を見てみると、トランスジェニック Runx1 タンパク質の発現により、腸管内の末梢誘導性制御性 T 細胞の割合は正常の野生型マウスと比べ 3 倍程度増加していることが分かりました(図 3右の上)。
この結果は、Cd11c-Cre によるトランスジェニック Runx1 タンパク質の発現操作という人為的介入により、TC-IV という抗原提示細胞の分化・機能を増強することが可能であり、その結果としてマウス生体内で末梢誘導性制御性 T 細胞を増やすことができることを示しています。
注 1)Caspar Ohnmacht et al. The microbiota regulates type 2 immunity through RORγt+ T cells, Science, 9 Jul 2015.
注 2)Vanja cabric et al. A wave of Thetis cells imparts tolerance to food antigens early in life. Science, 15 May 2025.
注 3)2026 年 2 月 19 日プレスリリース「免疫細胞の運命を決める“リン酸化スイッチ”を発見」
https://www.riken.jp/press/2026/20260219_2/
【今後の期待】
本研究は、Runx/Cbfβ 転写因子が Thetis 細胞の発生に必須であることを明らかにし、Thetis 細胞の中でも TC-IV サブセットが、末梢誘導性制御性 T 細胞の分化に必須の抗原提示細胞であるという遺伝学的な証拠を示したものです。また Runx 転写因子の発現を操作することで、TC-IV サブセットの分化が増強され、その結果腸管内の末梢誘導性制御性 T 細胞の数を増加させることが可能であることを明らかにしました。抗原提示細胞を操作することで、マウス生体内で末梢誘導性制御性 T 細胞を増やす方法は世界で初めてのものであり、今後は炎症性疾患や食物アレルギーに対する新規治療法開発への応用が期待されます。さらに外来性抗原への免疫寛容の成立という視点では、移植医療において異種臓器への免疫寛容の誘導への応用も期待されます。
【論文情報】
タイトル
Runx–CBFβ regulates the development of tolerogenic Thetis cells
著者名
Chihiro Ogawa, Chengcheng Zou, Yoselin A Paucar Iza, Motoi Yamashita, Tyler Park, Junji Harada, Naoko Satoh-Takayama, Masahiko Kuroda, Chrysothemis C Brown and Ichiro Taniuchi
雑誌
Nature Immunology
DOI
10.1038/s41590-026-02566-8
【補足説明】
[1] 免疫寛容
特定の抗原に対する免疫応答が抑制または欠如している免疫の仕組みやその状態。
[2] 末梢誘導性制御性 T 細胞
制御性 T 細胞は免疫の働きが行き過ぎないように整えて、体のバランスを保つ“調整役”の細胞。Foxp3 転写因子を発現する CD4+T 細胞として同定され、英語での略称でTreg(T レグ)と呼ばれることもある。末梢誘導性制御性 T 細胞は、末梢組織でナイーブ CD4 細胞([6]参照)から分化し、FoxP 転写因子に加え Rorγt 転写因子を共発現する特徴を有する。
[3] 抗原提示細胞
抗原を取り込んで MHC と呼ばれる細胞表面分子に載せ、T 細胞に抗原の特徴を提示する細胞。
[4] Runx1 タンパク質
Runx タンパク質は進化上、線虫から保存されている転写因子の一種で、細胞の分化や増殖などの重要な生物学的プロセスを制御している。哺乳動物では Runx1、Runx2、Runx3 の 3 種類があり、Runx1 は造血系の形成に必須であることが知られている。
[5] Thetis 細胞
Rorγt 転写因子の発現を特徴とする抗原提示細胞。末梢誘導性制御性 T 細胞(Rorγt+pTreg)分化を誘導する抗原提示細胞は、2020 年頃から世界で多くの研究室が探している細胞で、その探索は非常に厳しい競争の状況であったが、2022 年にブラウン・クリソセミス博士が、その候補として新しいタイプの抗原提示細胞を見つけ、ギリシャ神話の海の女神テティス(Thetis)から名前を取り Thetis 細胞(Thetis Cellsを略して TCs と表記することもある)と名付けた。
[6] ナイーブ CD4 細胞
抗原による刺激を受けておらず、活性化していない CD4 陽性 T 細胞。抗原提示細胞から抗原刺激を受けると活性化されエフェクターCD4 細胞に分化する。
[7] マスター転写因子
特定の細胞の「運命」や性質を決定付ける中心的な役割を持ち、多数の標的遺伝子群の発現を統括的に制御する転写因子。
[8] RNA スプライシング
DNA 遺伝情報が mRNA に転写され生成された RNA 前駆体の一部が、切断されて除かれた後、残りの部分が再結合する反応。
[9] C 末端
タンパク質はアミノ酸同士が脱水縮合して形成されたポリマーであり、隣接するアミノ酸は、それぞれのアミノ基とカルボキシ基がペプチド結合をしている。このポリマーの末端のフリーのアミノ基側を N 末端、カルボキシ基側を C 末端と呼ぶ。
[10] Cre タンパク質
loxP と呼ばれる特異な DNA 配列を認識し、loxP 配列同士間での部位特異的 DNA 組換えを起こす酵素活性を持つタンパク質。
[11] STOP 配列
遺伝子が読み取られるのを途中で強制的にストップさせる、特殊なブレーキ役となるような DNA 配列。遺伝子の転写をストップさせる polyA(pA)配列がよく使われる。この配列の両端に「loxP」を配置させると、Cre 酵素によって STOP 配列が切り取られ、その先の遺伝子が転写されるようになり、Cre 発現細胞で遺伝子の発現スイッチをオンにできる。
【国際共同研究グループ】
理化学研究所 生命医科学研究センター
免疫転写制御研究チーム
チームディレクター 谷内一郎 (タニウチ・イチロウ)
研究員 小川ちひろ (オガワ・チヒロ)
特別研究員(研究当時) ゾウ・チェンチェン(Zou Chengcheng)
基礎科学特別研究(研究当時、現 客員研究員)山下 基 (ヤマシタ・モトイ)
大学院リサーチ・アソシエイト(研究当時、現 特別研究員)原田淳司 (ハラダ・ジュンジ)
空間免疫制御理研 ECL 研究ユニット
理研 ECL 研究ユニットリーダー 佐藤尚子 (サトウ・ナオコ)
東京医科大学 分子病理学分野
主任教授 黒田雅彦 (クロダ・マサヒコ)
スローンケタリングがんセンター(米国)
准教授 ブラウン・クリソセミス(Brown Chrysothemis)
研究員 パーク・タイラー(Park Tyler)
博士課程大学院生 パウカイザ・ヨスリン(Paucar Iza Yoselin)
【研究支援】
本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業新学術領域研究(研究領域提案型)「血球系細胞分化過程での非ゲノム情報複製機構の解明(研究代表者:谷内一郎)」、同基盤研究(B)「C 末端構造を介した Runx 転写因子の機構制御機構の解明(研究代表者:谷内一郎)」、同基盤研究(A)「末梢性免疫寛容樹立機構の解明と介入法の開発(研究代表者:谷内一郎)」、同基盤研究(C)「Runx 依存的 Thetis 細胞分化制御機構の解明(研究代表者:小川ちひろ)」による助成を受けて行われました。
【発表者・機関窓口】
発表者 ※研究内容については発表者にお問い合わせください。
理化学研究所 生命医科学研究センター 免疫転写制御研究チーム
チームディレクター 谷内一郎 (タニウチ・イチロウ)
東京医科大学 分子病理学分野
主任教授 黒田雅彦 (クロダ・マサヒコ)
【発表者のコメント】
Cbfβ2 欠損マウスは、私が 20 年以上前に、独立研究者になり、初めて作製したマウスです。大腸炎を自然発症することはすぐに気づきましたが、その原因は長く解明できませんでした。他の研究者が末梢誘導性制御性 T 細胞を発見し、2022 年に Thetis 細胞が発見されたことでようやく Runx/Cbfβ 変異マウスが大腸炎を起こす原因を突き止めることができました。トランスジェニック Runx1 の発現で TC-IV や末梢誘導性制御性T が回復するばかりでなく、増加することは予期せぬ発見でしたが、この発見は治療応用への大きな可能性を示すもので、長年粘って研究してきたことへご褒美を頂いた気分です。(谷内一郎)
【図 1 Cbfβ2 欠損マウスは抗原提示細胞の問題で末梢誘導性制御性 T 細胞が欠損】
(A)野生型マウスと Cbfβ2 欠損マウスの大腸の組織像。Cbfβ2 欠損マウスでは大腸炎が起こっている。
(B)腸の T 細胞のフローサイトメトリー(1 個 1 個の細胞にレーザー光を照射し、その散乱光や蛍光を測定することで、細胞の情報を取得したり、特定の細胞を分取したりする技術)解析例。Cbfβ2 欠損マウスでは末梢誘導性制御性 T 細胞(Rorγt+ pTreg)の細胞集団が欠失している。
(C)Cbfβ2 の再発現実験の結果。抗原提示細胞で Cre タンパク質を発現する Cd11c-Cre マウスでは末梢誘導性制御性 T 細胞(Rorγt+ pTreg)の細胞集団が回復する。一方、T 細胞でのトランスジェニック Cbfβ2タンパク質を発現する Cd4-Cre マウスでは、末梢誘導性制御性 T 細胞(Rorγt+ pTreg)の細胞集団は回復しなかった。
(D)ナイーブ CD4 T 細胞を移入する実験結果。Cbfβ2 欠損マウスでは移入したナイーブ CD4 T 細胞は末梢誘導性制御性 T 細胞(Rorγt+ pTreg)に分化できない。
【図 2 Cbfβ2 欠損マウスでの TCs の欠損と Cbfβ2 再発現での TC-IV の回復】
フローサイトメトリーによる Thetis 細胞(TCs)の解析例。Cbfβ2 欠損マウスでは TC-II、TC-III、TC-IV が欠損しており、Cd11c-Cre マウスを用いた Cbfβ2 の再発現により TC-IV のみが回復した。
【図 3 トランスジェニック Runx1 による TC-IV、末梢誘導性制御性 T 細胞の増加】
Runx1 と Runx3 を CD11c-Cre で不活性化すると、腸の CD4+T 細胞集団の中で末梢誘導性制御性 T 細胞(Rorγt+ pTreg)が消失し、Thetis 細胞では TC-IV が欠損する。トランスジェニック Runx1 の発現により、TC-IV や末梢誘導性制御性 T 細胞は回復するばかりでなく、増加した。右の図の 1、2、3 はそれぞれ、1.野生型、2.Runx1/Runx3 欠損マウス、3.Runx1-Tg マウスを示す。「*」有意水準 5%での有意差あり、「*」有意水準 1%での有意差あり、「****」有意水準 0.01%での有意差あり。










