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2026-04-15

免疫細胞が血管をつくり骨再生を促進 ―新規生体活性ガラスによる再生医療の新戦略―

寄稿者:東北大学

《ニュース概要》
【発表のポイント】
・骨再生には血管新生が重要ですが、その制御機構は十分に解明されていませんでした。
・本研究では、生体活性ガラスが免疫細胞(マクロファージ)を介して血管新生を誘導する新たなメカニズムを発見しました。
・亜鉛イオンやフッ化物イオンを放出する新規生体活性ガラスが、血管新生を促進し、骨再生を大幅に向上させることを明らかにしました。

【概要】
骨折や腫瘍切除後に生じる骨欠損の治療には骨補填材が用いられていますが、大規模欠損に対する再生は依然として困難です。近年、生体内でイオンを放出する生体活性ガラスが注目されていますが、その作用機序、特に免疫系や血管新生との関係は十分に解明されていませんでした。
東北大学大学院歯学研究科の大竹航季博士、近藤威講師、江草宏教授らの研究グループは、亜鉛やフッ化物イオンを放出するリン酸塩系生体活性ガラス(ZFBG)を開発し、これが免疫細胞であるマクロファージを血管新生促進型の「M2d マクロファージ」に誘導することを明らかにしました。さらに、この作用により血管形成が促進され、骨再生が大幅に向上することをマウスモデルで実証しました。

本研究成果は、免疫細胞と血管新生を制御する新しい骨再生戦略を提示するものであり、次世代の骨補填材開発への応用が期待されます。
本研究成果は、2026 年 4 月 13 日に科学誌 Scientific Reports のオンライン版に掲載されました。

■研究の背景
歯科および整形外科領域では、骨折や腫瘍の摘出によって生じた骨欠損の治療に骨補填材(注 1)が用いられています。しかし、従来の材料では十分な骨再生が得られないことが多く、特に大規模骨欠損の治療は困難でした。
骨再生には血管新生が重要であり、近年では免疫細胞が血管新生を制御することが明らかになっています。しかし、その制御機構は十分に解明されていませんでした。
生体活性ガラス(注 2)は生体内で吸収しながら様々なイオンを放出する材料として医療分野において注目を集めており、特に骨再生への応用が期待されています。しかし、免疫細胞や血管新生を制御する生体活性ガラスの材料設計は確立されておりません。

■今回の取り組み
東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野の大竹航季博士、同研究科 次世代歯科材料工学講座の近藤威講師、江草宏教授らの研究グループは、亜鉛イオンおよびフッ化物イオンを放出するリン酸塩系生体活性ガラス(ZFBG)を開発しました。
ZFBG は従来の生体活性ガラス(BG45S5)と比較して高い溶解性とイオン放出能を有し、放出される亜鉛イオンおよびフッ化物イオンの作用により、免疫細胞であるマクロファージを血管新生促進型の M2d マクロファージへと誘導しました。
実際に、マクロファージを ZFBG とともに培養すると、BG45S5 と培養した群と比較して血管内皮増殖因子(VEGF)を多く産生し、その培養上清は血管内皮細胞の遊走能を強力に促進することを確認しました(図 1)。また、マウスの骨欠損モデルにおいて、ZFBG は血管形成を促進するとともに、骨再生を有意に向上させました(図 2)。
以上の結果から、ZFBG は免疫細胞を介して血管新生を誘導することで骨再生を促進することが明らかになりました(図 3/メイン画像)。

★図説は添付のPDFよりご覧ください

■今後の展開
本研究成果は、生体活性ガラスが免疫細胞を制御し、血管新生を介して骨再生を促進する新しい概念を示しました。
今後は、ZFBG を応用した新規骨補填材の開発を目指すとともに、免疫制御を基盤とした次世代の骨再生療法の確立につなげたいと考えています。

【謝辞】
本研究は、科学研究費助成事業 若手研究(JP23K16081、JP25K20340)、AMED 医療機器等研究成果展開事業 チャレンジタイプの一環で行われました。

【用語説明】
注1. 骨補填材:
自分の骨以外で骨再生に用いられる材料を指す。人工的に化学成分を合成した材料や動物由来骨を焼結処理したものなどが広く利用されている。

注2. 生体活性ガラス:
金属酸化物で構成される吸収性の合成物質である。構成成分のイオンを放出し、様々な生体活性作用を示すことから、近年、医療分野において大きな注目を集めている。

【論文情報】
タイトル:Zinc- and fluoride-containing bioactive glass enhances angiogenesismediated bone regeneration via M2d macrophage activation

著者: Koki Otake, Takeru Kondo*, Hiroaki Kakinuma, Yumi Sato, Sara Ambo, Amal Ashry, Kulapatch Engkatanachai, Hiroshi Egusa*
*責任著者:
東北大学大学院歯学研究科 次世代歯科材料工学講座 講師 近藤 威
東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野 教授 江草 宏

掲載誌:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-026-44931-5
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-026-44931-5