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2025-10-16

肝線維症治療薬の候補物質を発見~植物由来物質が肝臓の線維量を減少させることが明らかに~

寄稿者:大阪公立大学

《ニュース概要》
■概要
肝線維化は、慢性的な肝疾患に伴って生じる肝臓の病態であり、進行すると肝硬変や肝がんの発症につながります。肝線維症は、肝線維化がある程度進み、肝臓に線維組織が蓄積した状態で、活性化型に変化した肝星細胞が過剰な線維を産生する事が要因と考えられています。

大阪公立大学大学院医学研究科の松原勤准教授と大黒敦子研究員らの研究グループは、活性型肝星細胞に直接作用し、線維成分であるコラーゲンの発現を抑制させる物質を探すため、コラーゲンの発現制御に基づいた薬物スクリーニング系を開発しました。この薬物スクリーニング系を用いて研究を行った結果、Lawsoneと呼ばれる植物のヘンナに含まれる天然色素を発見しました。また、Lawsoneを肝線維症マウスに投与すると肝臓の線維量が減少することが分かりました。今後、肝線維症の治療に貢献されることが期待されます。

本研究成果は、9 月 4 日に国際学術誌「Biomedicine & Pharmacotherapy」にオンライン掲載されました。

図:Lawsoneは活性型肝星細胞のYAP蛋白質の分解を促進して線維遺伝子発現の減弱と線維分解酵素発現の増強を促し、肝線維症で認められる過剰な線維を除去することができる。

■研究者からのコメント
肝線維症を放置すると肝硬変という死に至る病気に繋がります。肝硬変治療薬の創薬研究で、植物のヘンナに含有するLawsoneに肝線維症を治療する作用があることを見出しました。医薬品になるまで多くの道のりがありますが、研究を続けていきたいと思っております

■研究の背景
肝線維化は慢性的な肝疾患に伴って起こる肝臓の病態で、肝硬変や肝がんの発症へと繋がります。肝硬変や肝がんは最悪の場合、死に至る疾患のため、肝線維症の治療薬開発に焦点を当てた研究が多く行われています。しかし、肝線維症は直接的な治療法がなく、治療満足度、薬剤貢献度ともに低い疾患です。そのため肝線維症に対する特効薬の開発が求められています。肝線維症は、肝臓に存在する肝星細胞が活性化型に変化し、過剰な線維を産生する事が要因と考えられており、活性型肝星細胞を制御することが治療法の一つと考えられています。

■研究の内容
本研究グループは、活性型肝星細胞に直接作用して、線維成分である I 型コラーゲンの発現を抑制する物質を探索するため、I 型コラーゲンの発現制御に基づいた薬物スクリーニング系(human COL1A2 promoter-based chemical screening system with LX-2 cells)を開発しました。この薬物スクリーニング系を用いて探索したところ、2-Hydroxy-1,4-naphthoquinoneが肝星細胞活性化阻害物質として同定されました。 2-Hydroxy-1,4-naphthoquinoneは、植物のヘンナ(学名Lawsonia inermis)から得られることから、Lawsoneとも呼ばれています。in vivo実験では、Lawsoneを肝線維症マウスに投与すると肝臓の線維量が減少することが確認できました。この抑制作用は、肝星細胞のYAP蛋白質の作用を抑制することで起きていると推定されます。

■期待される効果・今後の展開
Lawsoneは、肝星細胞の活性化を抑える遺伝子の発現を誘導する強力な肝線維化抑制物質です。一方で1,4-naphthoquinone誘導体でもあり、ラジカル産生による細胞毒性が危惧されます。そのため、実用化には活性型肝星細胞へ特異的に輸送できるドラッグデリバリーシステムを開発する必要があり、今後、活性型肝星細胞特異的輸送系の開発を進めていきます。

■資金情報
本研究は、主に日本医療研究開発機構肝炎等克服実用化研究事業 (JP18fk0210004,JP19fk0210050) 、日本学術振興会科学研究費助成事業 (JP15K08314,JP21H02626,JP23K21359)の助成を受けて実施されました。

■関連特許
特許第7142886号

■掲載誌情報
【発表雑誌】Biomedicine & Pharmacotherapy
【論 文 名】Lawsone can suppress liver fibrosis by inhibition of YAP signaling and inductionof CYGB expression in hepatic stellate cells
【著 者】Atsuko Daikoku, Tsutomu Matsubara*, Misako Sato-Matsubara, Miku Ando,Chiho Kadono, Sayuri Takada, Naoshi Odagiri, Hideto Yuasa, Hayato Urushima,Katsutoshi Yoshizato, Norifumi Kawada, Kazuo Ikeda.
【掲載 URL】https://doi.org/10.1016/j.biopha.2025.118520