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2025-06-03

健康なネコ・イヌにおける新規プレバイオティクス・プロバイオティクス・ポストバイオティクスブレンドの安全性評価と機能性評価

寄稿者:千葉科学大学

千葉科学大学 危機管理学部 動物危機管理学科 特担教授の小沼 守、アニコム パフェ株式会社 代表取締役社長 安宅 快、大相模動物クリニック 院長 村上彬祥の研究グループは、3施設の共同研究として、被験物質としてポストバイトティクスの乳酸菌・ビフィズス菌23種(死菌)、プロバイオティクスの納豆菌1種(生菌)、プレバイオティスク(ケストース・サイリウム)2種の新規ブレンド素材を健康なネコおよびイヌに投与し、その安全性と機能性を多面的に評価しました。研究方法は、ネコOne-Way試験(n-3, 投与・非投与期間各7日間)、イヌを並行比較対照試験(n=20, 対照群・試験群各10, 27日間)を実施し、血液検査や糞便分析、腸内フローラ解析、炎症・免疫マーカーの測定を通して、動物の健康や腸内環境に与える影響を科学的に検証しました。その結果、このブレンドは安全性が高く、腸内環境を整えるとともに、免疫機能の調整にも寄与する可能性が示されました。
本研究の成果は、2025 年 6月 3 日に国際獣医学誌 Open Veterinary Journal に掲載され、国際的に評価されました。

《ニュース概要》
【本研究のポイント】
・プレバイオティクス・プロバイオティクス・ポストバイオティクスを独自に組み合わせた新規ブレンドを開発
・健康なネコ・イヌを対象に、安全性および腸内環境や免疫機能に与える影響を評価
・臨床的指標・腸内フローラ・炎症マーカーなど、多面的な指標で効果を確認
・動物の健康維持や腸内環境改善に有用な機能性素材としての可能性を示唆
 
【研究背景と目的】
近年、ヒトと同様にペットにおいても腸内環境と健康状態の密接な関係が明らかになりつつあります。特に、プレバイオティクス(有用菌の餌)、プロバイオティクス(有用菌)、ポストバイオティクス(菌の代謝産物や構成成分)のそれぞれのネコ・イヌでの効果は多くの研究で報告されていますが、これら3つをバランス良く組み合わせたブレンドを、ネコ・イヌで調査した統合的な研究はなく、その安全性や有用性についての科学的検証が求められています。そこで本研究では、主にネコ・イヌで報告のある素材を集め、プレバイオティクス・プロバイオティクス・ポストバイオティクスの成分を組み合わせた新規マルチブレンドを健康なネコ・イヌに投与し、その安全性と腸内フローラ、免疫指標への影響を評価することを目的としました。

【成果とその意義】
本マルチブレンドは、全血球計算および血液化学検査の結果から、健康なネコおよびイヌに対して安全性が高く、副作用が認められないことが示された。
ネコでは炎症性サイトカイン(IL-6やTNF-αなど)の低下や、免疫マーカーの改善といった抗炎症作用・免疫調整効果が明らかとなった。
ネコおよびイヌの腸内フローラにおいて有用菌が増加し、炎症関連菌が減少し、腐敗産物の低下が示すように腸内環境改善効果が確認されました(図1)。

【今後の展開】
今後は、疾患を有する動物や高齢個体など、より条件の異なる集団を対象とした応用研究を臨床現場との連携により調査し、実用的な応用や製品開発を見据えた展開も視野に入れて進めていきます。また、本研究で評価した新規プレバイオティクス・プロバイオティクス・ポストバイオティクスブレンドは、今後、包括的に「マルチバイオティクス」という名称で呼称することも検討されるかもしれません。

【論文情報】
雑誌名 :
Open Veterinary Journal
論文タイトル:
Original Research:Evaluating the safety and functionality of a novel compound containing prebiotics, probiotics, and postbiotics in healthy cats and dogs
著者:
Mamoru Onuma, Kai Ataka, Akiyoshi Murakami
2025; 15(5): 1969-1981, doi: 10.5455/OVJ.2025.v15.i5.11

詳細はこちら:https://www.riken.jp/press/2025/20250603_2/index.html

図1. 犬の腸内細菌叢分析の結果(属レベル):対照群と試験群の上位10種の細菌種(平均値):対照群では有用菌のLachnospira属およびAnaeroplasma属が減少傾向を示したのに対し、試験群ではいずれもが増加しました。非有用菌では、対照群ではEscherichia-ShigellaとTyzzerella属の増加または中等度の変化が認められたが、試験群ではいずれも減少した。