仕事を始めたばかりの頃は、「まずは一人前になる」という目標があります。
ただ、ある程度経験を積むと、次の目標が見えにくくなることがあります。できることは増えた。任される仕事も増えた。けれど、このまま同じ働き方を10年続けたいのかは分からない。そんなときに考えたいのが、「10年後に何者になるか」ではなく、「10年後もどんな状態で仕事をしていたいか」という視点です。
10年後も「この仕事が好き」でいるためのキャリアの描き方
10年後は「職種」ではなく「仕事の時間割」で想像する
10年後のキャリアを考えるとき、「管理職になっている」「専門医になっている」といった肩書きから考え始めると、選択肢が狭くなります。
そこで一度、肩書きを忘れてみます。
「一日のうち、どんな仕事をしていたいか」と考えてみましょう。
たとえば、人と話す時間を増やしたい、新しいことを学ぶ時間がほしい、誰かを育てる仕事にも関わりたい、現場で手を動かす仕事は続けたいなど。こうして考えると、自分が本当に望んでいるものが見えやすくなります。
さらに、「増やしたい時間」だけでなく「減らしたい時間」も書き出してみましょう。10年後の自分を想像するとき、未来の肩書きを当てる必要はありません。「何に時間を使っていたら、仕事が面白いと思えるか」を考えるほうが、今の選択につながります。
「得意」を伸ばすだけでなく、「好き」を残す
経験を積むほど、仕事では「得意なこと」が増えていきます。周囲から頼られる仕事、評価される仕事を任されるようにもなるでしょう。
ただし、「できる仕事」と「続けたい仕事」は同じとは限りません。得意だからと仕事が集まり続け、その結果、自分が本当に面白いと思っていた仕事をする時間がなくなることもあります。
そこで、定期的に仕事を三つに分けてみます。
- できるし、好きな仕事
- できるけれど、あまり好きではない仕事
- まだ得意ではないけれど、やってみたい仕事
キャリアを考えるときに注目したいのは、三つ目の存在です。経験を積んだ人ほど、「今できること」を基準に仕事を選びがちです。しかし、10年後の自分を変えるのは、今できることだけではありません。「少し興味がある」「もう一度やってみたい」と思うものに、小さく時間を使ってみる。
その小さな実験が、次の専門性や役割につながることがあります。
「長く働くためには、「頑張らない方法」も身につける
キャリアというと、成長や挑戦の話になりがちです。
でも、長く仕事を続けるためには、「頑張る方法」だけでなく「頑張り続けなくても回る方法」を考えることも必要です。仕事ができる人ほど、自分で抱え込んだり、頼まれると引き受けたりして、いつの間にか余白がなくなることがあります。そこで、「自分がやるべき仕事」と「自分でなくてもできる仕事」を分けてみます。人に任せる。仕組みをつくる。やめる。頻度を下げる。こうした選択は、仕事から逃げることではありません。むしろ、自分にしかできない仕事や、本当に大切にしたい仕事に力を使うための工夫です。
10年後も仕事を楽しみたいなら、10年間ずっと全力で走れる自分を目指すのではなく、力を抜いても仕事が回る状態を少しずつつくっていく。
これもキャリアの一部です。
10年後の自分に「三つの質問」をしてみる
最後に、10年後を具体的に考えるための方法を一つ紹介します。
紙に「10年後の自分」を書き、その自分に次の三つを質問してみます。
- 今より、どんな仕事をしていたい?
- 誰と、どんな関わり方をしていたい?
- 今の自分に「これは早めにやっておいてよかった」と言うとしたら何?
ポイントは、年収や役職だけで答えないことです。
「新人を育てる仕事が楽しい」「現場に立ち続けたい」「新しいことを学ぶ時間を確保できている」「仕事以外の時間も大切にできている」。
そんな答えが出てきたら、それを実現するために、今から何を経験しておけばいいのかを逆算します。
10年後を予言する必要はありません。「こうなりたい」ではなく、「こういう毎日なら、10年後も仕事を好きでいられそうだ」と考える。
そのほうが、今の仕事の選び方や時間の使い方を具体的に変えられます。キャリアは、大きな決断だけでつくられるものではありません。何を学ぶか。何を引き受けるか。何を手放すか。誰と働くか。そして、自分が面白いと思えることにどれだけ時間を使うか。
そうした日々の選択が、10年後の仕事をつくっていきます。
「この仕事を10年続けられるだろうか」ではなく、「10年後もこの仕事を好きでいるために、今の自分は何を変えられるだろうか」。
キャリアを考えるときは、そんな問いから始めてみてもいいのではないでしょうか。